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【資料公開】アジャイルカルチャーが組織に根付くまでの挑戦

Regional SCRUM GATHERING Tokyoでお話した「アジャイルカルチャーが組織に根付くまでの挑戦」の資料です。

現場コーチとして、組織にアジャイルなカルチャーを広めていく時の壁に関する事例・経験・道具箱(プラクティス)をザッとお話しました。
かなり詰め込んでしまった(45分で122ページ)ので、深く話しきれないこともありました。
関西/関東、勉強会/企業問わずお声がけいただければお伺いしますのでTwitterFacebookなどでお気軽にお声がけください。

まとめは以下です。

社内勉強会

社内勉強会の難しさ

これまで(セミナーや読書会などの)社内勉強会をやったり、他社さんで社内勉強会のお手伝いをした中で、難しいところや思うところがあったので書いてみます。

※注意:この記事は旧サウスポーなエンジニアの独り言から移行し一部修正したエントリです。

社内勉強会の定義

クローズドで開催され、参加者は(原則)社員のみ。スピーカーや講師は外部の場合もある。

モチベーション

参加者のモチベーションは(社外勉強会とは)大きく異なっています。
社外勉強会ではほぼ「自分で選択して参加」しています。
中には上司や会社から命令されて参加するというパターンもありますが観測範囲では少数だと感じています。

一方、社内勉強会では「面倒だけど評価に響くかも」とか「仕事的だから」とモチベーションが高くなく、良い感情を持っていない状態で参加する人もいます。

不思議なことに「自主参加で評価などには一切関係ありません」とアナウンスしても一定数の割合で本当に嫌々参加している人がいます。
残念ながら、そういう人の一部は(無関心でなく)抵抗勢力になってしまうこともあります。

そのような抵抗勢力との対応にリソースを使うと、数少ない興味ある人へのリーチやリマインドが弱くなり、参加者が集まらなかったり、無断キャンセルやドタキャンばっかりだったということも起こります。
#講師と参加者の割合が2対1というマンツーマンどころか講師の側がダブルチームという悲しいセミナーも経験しました

いつ行うか?

いつ行うか?も社内勉強会では悩ましい問題です。

1:定時内

「(日常の)業務タスクとの兼ね合いをどうするのか?」という声が上がってきます。
「○○という社内勉強会に参加していたため、進捗が遅れました」なんて報告されたりすると、そのプロジェクトからクレームが飛んでくることもあるかもしれません。

2:定時後

「それは業務命令ですか?残業時間として付けますが良いですか?」という声が上がってきます。
この場合、「業務命令でないから自主参加」or「業務命令」という2パターンがあります。

「業務命令」の場合、残業代や業務監督責任なども発生してくるので、それなりに上司や組織に根回しをしてバックアップを得ておく必要があります。
そこまでゴタゴタ言う人はモチベーションが低いことも多いので「そこまで言うなら来なくて良いよ」と思うこともありますが、組織に社内勉強会から得られる何かが根付いて欲しいと思うと割と対応することが多かったりします。

3:休日にする

定時後の場合と同じ問題がより高いレベルで発生します(休日出勤手当や振り替え休日など)。
「業務命令」という形にしても、なかなか組織としては認めてくれないと思います。

どうしたらうまく行くのか?

「うまくいく方程式」があるわけではありませんが「参加者のメリットを提示する」「仲間を見つける」はまず最低限必要なことだと感じています。

1:参加者のメリットを提示する

「メリット」というと生々しいですが、「今、困っていること」を少しでも解決できそうなら、時間を作って参加してくれることもあります。
またすぐ役立ちそうなことなら、参加者もいつか役立つかもしれないことよりモチベーションが高くなることが多いです。

このパターンで1、2回社内勉強会に参加すると、後でテーマが「いつか役立つかもしれないこと」になっても継続的に来てもらえたりします。

2:仲間を見つける

継続しようとすると、準備などを全部自分1人でするのは、時間的にも気持ち的にもしんどい時期が来ることもあります。
その時に頼れる仲間やバックアップしてくれる上司がいれば、継続することもできます。
※参考:[雑多]「XP祭り関西2012」でLTしてきました。

社内勉強会はモチベーションの問題など悩ましいことがあります。
#もちろん全然問題なく社内勉強会をやれる組織もあります。

一方で、自分の多くの時間をその組織とそこにいる同僚(仲間)のために使っています。
なので、そのレベルアップのため、そして伝える側のレベルアップのためにも社内勉強会をやってみてはどうでしょうか?

※アイキャッチ画像:http://www.flickr.com/photos/mattimattila/6878384654/

「感謝の言葉を伝える」アクティビティ

少し前、グループでフリカエリとこれからの活動について、半日時間を取って、しっかり議論しました。

夜は、(それまでの活動が一区切り付いたこともあって)打ち上げをしたのですが、そこでちょっとしたアクティビティをやったので紹介します。

元ネタ

書籍「アジャイルレトロスペクティブズ 強いチームを育てる「ふりかえり」の手引き」にあった【感謝(Appreciations)】と、社内SNSのエントリからいただきました。
※社内SNSでは「プラスのストローク」という名前で紹介していました。

「感謝の言葉を伝える」(プラスのストローク)

・アジャイルレトロスペクティブの1つ
・成長や良い点…プラスのストロークを周囲からもらうことができる。
・お互いの成長を確かめ合うことができる。(※今回はここまではできませんでした)

準備するもの

B5~A4サイズの人数分の厚紙とペン。
厚紙は色紙などでも良いです。

やり方

まずは準備です。
1:厚紙とペンを全員に配ります。
2:それぞれ厚紙が(自分のモノであると分かるよう)左上に自分の名前を書きます。
 リーダーは、自分の名前ではなく、「チーム」と書いても良いと思います。
3:最後に厚紙に、そこにいる「人数-1」人分の線を書いて区切ります。
 (例えば7人なら6等分にします。)
 他の方がコメントを書けるようにするということです。

これで準備完了です。
1:準備ができたら、右/左周りどちらでも良いので、全員同じ方向に厚紙を回します。
2:自分のところに回ってきた厚紙の左上に名前の人の…
「この1年で成長したと思うところ」
「素晴らしいと思うところ」
「感謝の気持ち」

 …を書いていきます。そのコメントには、書いた方の名前をつけておきます。
3:全員書き終わったら、また1に戻って厚紙を回して同じことをします。
4:これを繰り返し、1周回って自分の所に厚紙が戻ってきた時には、そこにはチームみんなからの言葉が書かれているというわけです。

やってみて

事前に「こういうアクティビティをしますよ~」と伝えた時には、(褒める/られることに慣れていないからか)少し気恥ずかしそうでした。が、実際にやると、(お酒も手伝ってか)積極的に一生懸命考えて、良い言葉を厚紙に綴っていたようです。

できあがった自分への言葉が書かれた厚紙をみんな嬉しそうに、見ていたのが印象的でした。
もちろん自分も嬉しかったのですが、(やる前のイメージより)「ここまで嬉しいものなんだ~」と強く思いました。

一歩発展して…

ちなみに前述の書籍や社内SNSのエントリでは、その先があります。
それは、みんなの厚紙を発表…「○○さんから、~という言葉を頂きました。ありがとうございます!」…するというものです。
こうすることで、良い所、感謝の言葉/気持ちがさらに広がっていきます。

ポイントは反省会ではなく「良いと思うところを褒める/伝える」というものです。

今回は年齢、キャリア的に中堅以上が多かったのですが、若手がいるチームですると(その若手にとって)大きな自信になるかもしれないと思います。
#よくKPTを使ったフリカエリなどで、あるアクションやプロセスに対する「良かった」点などを挙げますが、こういう個人に対する「良かった」点のフィードバックというのも大事なものです。

※注意:この記事は旧サウスポーなエンジニアの独り言から移行し一部修正したエントリです。

※アイキャッチ画像:https://www.flickr.com/photos/stevendepolo/4582437563

自発的に動いた人が損しない仕組み作り

危機意識を持って…もしくは思いつきで…、トップダウンの形で「組織風土を改善し、より強固にしよう」とか「ノウハウを共有して、ビジネスの力にしよう」という話が降りてくることがあります。

(トップから命令された)実行チームは、この話に対して(ディテールは違うにせよ)、社内SNSやWikiなど情報を集積できる場を設けて、そこに投稿してもらう(そして利用者はそれを見る)という手段を取ることが多いと思います。

こういう場合のたいがいのパターンは…

1:最初は(トップから指名された実行チームが投稿するので)ちょっとだけ活発になる。
 ↓
2:けれど、それ以外に投稿が少なく、実行チームもそこまで推進力、継続力がなく閑古鳥が鳴いている。

…となります。

こういう話に対する現場の反応は「忙しいから無理!」というのが大半です(おおっぴらに言うかは別として)。
ただ、「ノウハウ共有、良いじゃない!いっぱいノウハウ提供するよ」という人も、それ程多くありませんが、一定の割合でいます。
なので、こういう試みのポイントは、上に書いた1の状態から2の状態になるまでの間に、その人達が継続的にアクションをする(しやすい)状態を作れるか…だと思います。
が、往々にしてそこまで気が回されていなかったりします。

例えば…

1:社内SNSにせっせと投稿する。
 ↓
2:それを上司から「あいつ、暇やねんな。仕事していないな」と評価される。

 …とか…

1:社内規約を(ちょっと解釈を広げて)工夫するノウハウXXを投稿する。
 ↓
2:(その社内規約の管理側から)「そういうXXはN条では認められていない!!けしからん!!」という重箱の隅をつつく指摘があったり。

 …とか…

1:社内SNSにせっせと投稿する。この人は情報を知らせたいだけで、それをどう使うかはそれぞれと思っている。
 ↓
2:「じゃあ、君がその情報をより広めるような役割をしてくれ」と予想外の役割を押しつけられる。

…というようなことが、あったりします。
そして、それに対して実行チームやトップからのフォローもなかったりすると、そういう人達も「雉も鳴かずば打たれまい」と考えてアクションを止めてしまいます。

人間学とか行動学なんて難しいものではなく、ちょっとした想像力を持ってそれを活動に組み込めば、もっとうまく行くのに…と残念に思います。

#本来、トップダウンでなく、現場から自然発生的に産まれ、それをトップ層がフォロー(正しく評価するとか、環境を整備するとか)して大きくするのが良いとは思いますが…。

※注意:この記事は旧サウスポーなエンジニアの独り言から移行し一部修正したエントリです。

Photo credit: Chairman of the Joint Chiefs of Staff via Visualhunt.com / CC BY